こう見えて僕、家で料理とかします。
カレーとかシチューとか野菜スープとか……全部レシピ同じじゃん!って揶揄されそうだけど、実はけっこう違ったりする。
カレーは豚肉と玉ねぎ、あとニンジンとジャガイモだけど、シチューはそもそも鶏肉を使うし、カレーの具材プラスアルファでブロッコリーとか小松菜の草系を追加する。野菜スープはシチューとほぼ同じ具材だけど、スープの味付けにほんだしと醤油、おしゃれに本みりんを使ったりもする。本みりんがどんなスパイスを与えているのかよくわかってないけど、それなりに美味。というか味が濃ければだいたい美味。
いやなんかさ、こう書き綴ってい見ると、意外と僕、料理できるじゃん!って思ったよね。なんか謙遜してた、自分のこと。
思い返せば、料理とかまったくしたことなかった昔の自分。あの頃の僕は、誰でも作れると言われているカレーですらべちゃべちゃで不味かった。まずね、もうね、水の分量を量るっていうことを知らなかったよね。なのに、いっちょ前にはちみつとかは入れたりしてね、コクを引き出そうとかね。もうほんとやかましいわって感じです。コクだす前に見ず減らせって感じです。
しかもね、当時はべちゃべちゃな理由を「あ~ずっとかき混ぜていたから、ドロっとするタイミング失っちゃったかー」って本気で納得してたからね。火元から離れちゃいけないと思って、延々とかき混ぜ続けていたんですよ。そのうち「ヒッヒッヒ」とか怪しい笑い方で老婆になっちゃうんじゃないかってくらい。
そこから比べるとかなり成長したなと。改めて思い返すことで自身の成長を感じられたわけで。そう思だけで、世界の見え方も変わるよね。必然、カラフルに見えてくる。
で、そんなレインボーワールドを悠然と歩きながら、今日は得意の野菜スープでも作ろーと近くのスーパーへ。慣れた手つきでお馴染みの具材、そして無くなりかけていた本みりんを買い物かごに入れ、颯爽とレジに向かう。
店員さんは40代後半くらいに見える優しそうな女性。本みりんのバーコードを読み取ったとき、あきらかなに表情が変わったんだよね。そんでストップモーション。ピタリと動きを止めて、同時に僕を睨みつけるような鋭い眼光を飛ばしてきたんです。
そして流れた「年齢確認商品です」の音声。
これは……まさか……⁉
期待を胸に、店員さんの言葉を待つと――
「失礼ですが、年齢確認できるものありますか?」
久々にキターーーーーーー!!!!!!!!
そう、そうなんです。本みりんはアルコールが含まれているんです。店員さんが聞いていることはつまり「凄く若くてカッコよく見えるんですが、間違いなく20歳以下ですよね?何歳か教えてくれませんか?私は40代後半です。ふふ、お母さんみたいですか?よく言われます。もしよかったら私とry――」って言うこと!(困惑)
嬉し恥ずかし照れ隠し。
昔から童顔には自信がある僕。もうねー地元じゃ負け知らずって感じですよ。修二と彰と明影マサヒロってな感じで。
まあこの時はマスクもしていたからね、ある意味童顔最強状態ではあった。店員さんを責めるのはお門違いってもん。むしろこっちが謝りたい。可愛くてごめん、童顔過ぎてごめん、って!
苦しゅうない苦しゅうない、見せますよ。見せますとも。是非とも見てください。あなたが12歳だと思った私の本当の年齢を見てくださいと。私の有効期限が切れたマイナンバーカードで確認どうぞと。
同時にマスクを取って顔を見せたんだけどさ、カードの年齢見る前に僕の顔を見て、「あっ……」って苦笑された。「えっ……?」って困惑する僕の目を逸らし、一応確認しておくか程度にカードに視線を落として、無言でうなずいてるの。なんていうのかな、さっきとは打って変わって納得しちゃってる感じ?
え、なになに?普通あれなんじゃないの?「見た目お若いんですねー、羨ましいですぅ、失礼しましたあ」くらいのキャッチボールするんじゃないの?全然ボール投げてくる気配ないし。ずっとグローブにボール隠したまま。リリースしてくれないの。
結局最後まで軽く会釈をされて「失礼しましたあ」だけ。しかも凄い納得顔。むしろ得意げでもある。
レインボーに色づいた世界は再びモノクロに堕ち、本みりん片手に寒空の下で帰路につく、自称童顔永遠の25歳なのでした。